気まぐれ随想録『赤とんぼ』
倉金持ち
冬の町中でよく見かける樹木にクロガネモチ(黒鉄黐)がある。
モチノキ科の常緑高木で、公園や通りの並木によく植えられている。枝一面に紅い実をびっしり付けて、遠くから見ると花のようにも見える。
この時季の街路樹は裸樹が多く、町中も殺風景な感じに変わってしまうため、彩り豊かなクロガネモチのような木は街路樹にもよいだろう。
だが、その紅い実は小鳥が好まないのか? 根元に落ちたり実の数が減少したりしている様子がまるでない。樹勢もけっこう強く、丈夫そうな樹木だ。紅い実が長期間楽しめることから、冬などには適した街路樹だと思うし、もちろん植えるほうでも、そのへんは計算して植えられているのだろう。
冬の閑散とした景観の中で、紅い実をいっぱい身にまとっているクロガネモチは、まるで冬の貧乏な樹木の中のクラガネモチ(倉金持ち)のようだ。