鄙乃里

地域から見た日本古代史

文明の利器

 気まぐれ随想録『赤とんぼ』


  文明の利器


 最近の電化製品等には細かい機能がいっぱい備わっている。細かすぎて、こんな機能が必要なのかと思うぐらいだ。しかも複雑で、箱を開けてマニュアルを見た途端に嫌気が差すのは、自分だけではないだろう。


 最近では説明書の内容を簡略化して、詳細はオンラインで提供し、ダウンロードさせるような方法も多い。コストの削減が主目的としか解釈できないが。だからといって機能が理解しやすくなったわけではないし、むしろ手許の説明書が中途半端な分だけ使う側は初期設定にも苦労することになる。そして、そんな機器の調整ばかりに時間を費やしているうちに、肝心な用件が出来ないままに日々が終わってしまうのである。


 しかし、家庭にある種々の製品について、それほど多くの機能をすべて覚えきれるものだろうか? そして、実際に使いこなしているだろうか? 自分の身のまわり、家の中をよく観察してみるとよい。本当に日常的に役立ち、親しんで愛用している器具は、みんな単純で使い易いものばかりだ。複雑でやっかいな機器は敬遠され、放置されたまま、片隅で埃をかぶっている。そのうち新品同様のままでリサイクル・ショップかゴミステーションに出されてしまうのがオチだろう。しかも、そんな製品に限って高価なものが多いのである。


 だったら、最初から本当に役立つ製品だけを身の回りに置けばいいわけだが、人間の習性はかなしいかな、どうしても物珍しさや宣伝につられるままに、新製品を次々と衝動買いしてしまうので、結局は無駄な買物が増えてしまうわけである。


 シンプルとは、何も身軽になることだけを意味するのではない。本当に自分に役立つもので身辺をまとめることでもある。それがモノに縛られることなく自分を活かせる方法であり、安心立命の生き方にも通じる道ではないかと思うのである。




 

      

(2019年3月11日の記事です)