鄙乃里

地域から見た日本古代史

楽しい日本

 気まぐれ随想録『赤とんぼ』


  楽しい日本 

 

 あと2ヶ月半後の4月13日から6ヶ月間の大阪万博が始まるため、会場では今も急ピッチで工事が進められている。

 それに関して先日、大阪を訪れた総理と知事との間で会談があり、「夢のある未来のために」という話しが出てきたが、それが、いかにも現実離れしたノーテンキな発言のようで、何だか不安になった。


 今の日本の状況下で
はたして「夢のある未来」なんてあるのだろうか?

 実際、ここ数十年の間にも南海トラフの連動地震を始め、破滅的な大災害の可能性が、いくつも高確率で指摘されている。大地震は確実に発生するし、津波も押し寄せる。

 中でも連動地震は国土の三分の一が大きな影響を受け、死者数の予想も数十万単位と尋常な数ではない。家屋の損壊・焼失を始め、インフラ・産業設備の被害に至っては想像すらつかない。夜間ともなれば火炎の外は日本中が真っ暗闇だし、救援なんて当分の間は不可能である。助けを必要とする地域があまりに広過ぎて、救援可能な地域のほうがむしろ限定されるくらいだ。救出手段も命令系統も大混乱を招くことは間違いない。

 とくに昭和以前と比較すると、現在は産業規模や交通網が格段に発達し、あらゆる工業・港湾の危険物が都市部や海岸部に密集しているため、従来の自然災害に加えて、新たに文明災害というものを考慮しないといけない。

 高層ビル群も長周期地震動により倒壊したり、ガラスや物が落下する恐れは十分に考えられるが、地下施設も天井部分が崩落したり、水が侵入すると超危険だ。高速道路や橋梁も各所で寸断されるだろうし、それに関連して交通事故や自動車火災が多発するだろう。



 加うるに、今は自然災害だけではない。天災のほかにも国際情勢がますます混迷の度合いを深め、戦争好きな指導者や国が世界に跳梁しているため、いつ戦渦に巻き込まれるかも分からない。危険な感染症だって、かつてないほど流行している。

 そんな状況下において今、緊急で必要とされているものは、表向きのノーテンキな夢よりも、こうした大災害や外交上の懸念に全力で対応し、国民の命と財産を守り抜く強い決意ではないのか?

 警告される国難は実は遠くの話で、実際はすぐには来ないとたかを括っているのだろうか?  それとも、子供だましのリップサービスで、近い将来に迫る過酷な試練を回避できると本気で考えているのだろうか? 言っていること、考えていることが、あまりに楽天的すぎて…その本意が量れないのである。

 お家芸の「本音と建前」のように、「夢と災害」は別問題だと…笑って済ませられるのならいいのだが、現実はそうはうまくいかない。東日本大震災能登半島地震も一部で予測はされたが、想定外だった。近年は気候変動のためか土砂災害や洪水・大規模な森林火災も世界各地で頻発している。

 そうした問題をすべて棚上げして生きよというのなら、来ることのない「未来の夢」など見るよりも、むしろ賃上げでもして、今の刹那を楽しく過ごしたほうがまだ幸せではないか。 


 下手な夢や慰めなどは要らない。国民の命や財産を守らない未来や夢などあるわけがない。だから、日本は甘いと言われるのだ。今はインバウンドで日本は天国みたいに錯覚されているが、板子一枚、下には地獄の荒海が待っている。そうならないことを切に祈りたいものである。

 

天災は忘れた頃にやってくる  寺田寅彦


 もちろん、忘れなくてもやってくる