鄙乃里

地域から見た日本古代史

8.山部赤人と伊豫の湯(2)

 8.山部赤人と伊豫の湯(2)

 また山部赤人の本歌にある「島山」は、筆者も最初は島と山のことだと解釈していたが、よく読むと、本当に島と山のことだろうか。なぜなら、島と山を褒めておいて、また続いて伊豫の高嶺が詠まれているのは、いかにも重複して不自然な感じであり、赤人のような名だたる歌人が、そんなまずい言葉の置き方をするだろうか。つまり、これは島と山ではなく、「島山(しまやま)」で一つの言葉なのではないか。…という点がある。

 島山とは海に囲まれて島のように見える小高い丘陵のことである。ふだんは地続きであるが、遠浅の海岸のため、潮が満ちると丘陵が海に囲まれて島のように浮いて見える美しい景勝地のことであろうと思う。つまり、これは伊豫国にあった名勝の「島山」を指すのではないだろうか。歌にある「宜しき」とは単に「よい」とか「美しい」とかいうだけでなく、「名勝として知られている」という意味があるのではないだろうか?
 だったら、その名勝の「島山」が伊豫国のどこにあるかを調べてみるべきではないのだろうか。

 

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(つづく)