日本総鎮守・大山祇神社が鎮座する今治市の大三島は、現在は本四連絡橋今尾ルート(通称:しまなみ海道)で連結されていますが、以前は船で行く必要があったため、大きな神社なのに何年も行ったことがありませんでした。
初めて訪れたのは中学時代の見学旅行だったと思います。それでも、神社前の楠の巨樹と宝物館の義経などの鎧だけは、大人になってからもずっと頭の片隅に残ったままでした。今はしまなみ海道が出来たので、ずいぶん行きやすくなったと思います。
歴史民俗資料室の地図
村上三島記念館
村上三島氏は上浦町出身の書家。
記念館は今治市大三島の上浦町井口にあります。
展示作品は隷書体から現代の短歌まで多岐に亘り膨大な収蔵数で、いずれも完成度が高く圧巻。
多々羅大橋は大三島から生口島(尾道市瀬戸田町)へ架かる橋です。
生口島は平山郁夫画伯の故郷でもあり、平山郁夫美術館が建設されています。
また、以前から西日光耕山寺などの名所もあって、一見の価値がある島です。
村上三島氏の像は記念館内にもあります(こちらは伊藤五百亀作)。
宮浦町の大山祇神社正面
左の伊藤博文公揮毫の石柱には「大日本総鎮守大山祇神社」、奥の村上三島氏揮毫の石柱には「延喜式内社・伊豫国一宮 大山祇神社」とあります。「日本総鎮守」は明治以降の国家スローガンではなく、平安時代以前からすでにあるものです。
なぜここに伊藤公の揮毫があるかといえば、明治42年3月に公が神社を訪問しているからですが、彼自身の家系が河野氏の出身によるものでもあります。大山祇神社はかつての伊予水軍で知られる越智・河野氏の氏神であり、村上氏も信奉した神社でした。
大山祇神社鳥居の神額
平安時代の三蹟の一人、藤原佐理が航海安全に感謝し、船板に書いて奉納したとされる社名の文字から起こしたもので、船板に書かれた現物は宝物館にあります。「日本総鎮守大山積大明神」となっている。
これは二の鳥居で、一の鳥居は宮浦港にあります。以前は船で参拝に来ていたので一の鳥居を通っていましたが、現在は二の鳥居前に車道があり、近くに駐車場もありますので、たいていこちらからお参りしています。
大山祇神社総門(2010年建造)
まだ新しい総門です。
この石柱は村上三島氏の揮毫によるもので、格調が高く、柔らかみのある文字ですね。
能因法師雨乞いの楠
総門をくぐって本殿へ向かう左側にあります。
能因法師は988年の生まれで、俗名は橘永愷(たちばなながやす)といいましたが、若い頃に剃髪して歌の道に進みました。
都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関(『後拾遺集』)
嵐吹く三室の山のもみぢ葉は龍田の川の錦なりけり(『後拾遺集』『小倉百人一首』)
などの和歌は、よく知られています。
法師祈祷の年は年明けから島に雨がなく、伊豫国守から祈雨を乞われて、この地を訪れました。そして大山積神に以下の一首を捧げて祈りました。
天の川苗代水(なわしろみず)にせきくだせ天降(くだ)ります神ならば神
すると、やがて雨が降り始め3日3晩降り続いたといわれています。
それでこのような歌を遺しました。
世をすくふ心もふかきことの葉にひかれて降る天の川水
そのとき和歌を奉納した楠が、この雨乞いの楠ということです。
今は枯れてこの姿を残しています。これも相当古い楠でしょう。
乎知命(おちのみこと)御手植の楠
根回り20m、高さ15.6m、神社一の巨樹とのことです。この楠は生きています。
しかし、能因法師の楠のほうが、見かけは大きそうに見えます。
ほかにも大楠があり、どちらにしても古い楠が多いところです。
伊藤博文公御手植の楠
明治42年3月に訪れたときに記念植樹されたそうです。
まだ細いですが、それでも百年以上は経っています。
それにしても年数の割には細いですね。
神 門
少し石段を上がった本殿の手前にある門です。
大山祇神社の社紋
これは大祝󠄂家越智氏の家紋で、『予章記』などの伝承によると、神功皇后の新羅遠征に参加した小千三並の時代に考えられたように書かれています。角違いの「隅切折敷縮三文字(すみきりおしきちぢみさんもじ)」で、縮三文字は、一の字が波間に揺らめいて、ゆがんだ三の字に見えたところからだといいます。
拝 殿
大山祇神社本社の拝殿。
神 殿
拝殿を右へ廻ったところから。
神 殿
玉垣の背後から。神殿の後ろ側。
中央が本殿。
左の上津社・右の下津社には大雷神(おおいかづちのかみ)と高龗神(たかおかみのかみ)、並びにそれぞれの姫神が祀られているとのことです。
回 廊
拝殿の左側の回廊。
新調なのか、修復なのか、まだ新しいようです。
神與庫
神與が納められている。
拝 殿
ぐるっと回って、また拝殿正面へ出ます。
神社背後の神体山
左端が鷲ヶ頭山(わしがとうさん)、右端が安神山 (あんじんさん)。鷲ヶ頭山は元は神野山と呼ばれていました。
大山祇の社名と関連性があるのか。神体山とされているようです。
長いので、次回の ②へ続きます。