鄙乃里

地域から見た日本古代史

昭和おもかげ紀行

《 目 次 》


  1.14しか見えないのはなぜ? 竜安寺石
  2.音羽の滝は観音霊場 清水寺
  3.国譲りの社 出雲大社
  4.灯台・海猫・国引き神話 日御碕
  5.オリーブと二十四の瞳 小豆島
  6.歴史が語る海の要衝 関門海峡
  7.親鸞聖人ゆかりの門跡寺院 青蓮院
  8.もみじ彩る洛西の山寺 三尾
  9.地球は生きている 島原雲仙温泉
  10.ダムの直下に露天風呂? 湯原ダム
  11.毒ガスの島からウサギの島へ 大久野島
  12.フェニックス揺れる海 日南海岸
  13.洛北に息づく静寂の里 寂光院・三千院
  14.世捨人とわびさびの里 嵯峨野
  15.森鴎外と乙女峠 津和野
  16.自然動植物園と遊覧船で遊ぶ 九十九島
  17.性空上人の夢と海の菩薩 普賢寺
  18.早春の十文字原高原 別府
  19.水戸藩御連枝の別邸 栗林公園
  20.世界平和パゴダと和布刈公園 門司は九州の玄関口
  21.金閣寺から仁和寺へ きぬかけの路
  22.今も異国情緒ただよう港町 長崎①
  23.広島県が誇る内陸の渓谷美 三段峡
  24.夜景と電波塔 北九州のシンボル 皿倉山
  25.東山界隈を歩く 京都
  26.火山と湖 神話の景観美 えびの高原
  27.能島水軍と鳩子の海 山口県上関町 
  28.崇福寺と西海橋 長崎② 
  29.懐かしきころの道後公園と市街 松山市 
  30.『砂の女』と貝殻節 鳥取砂丘
  31.冬の福知山トレッキング 北九州 
  32.東照宮と杉並木 日光
  33.指宿から桜島へ 鹿児島
  34.天台宗延暦寺を訪ねて 比叡山
  35.若戸大橋を渡って高塔山へ行こう 若松
  36.金烏城に美術館 岡山県
  37.天の逆鉾が語る記紀神話の世界へ 霧島
  38.思い入りつつ 鎌倉散歩
  39.市街地に近いカルスト台地 平尾台国定公園
  40.電気科学館のプラネタリウム 大阪
  41.遊覧船で巡る備讃瀬戸 鷲羽山
  42.光る太陽 花野を越えて 走れやまなみハイウェイ
  43.天狗と水は洛北の守護神 鞍馬山
  44.山裾の緑もなだらか 三瓶山
  45.大内文化が花開く西の京都 山口市
  46.霊の洞窟・曲水の石庭 秋芳洞と漢陽寺
  47.カルデラをゆく 阿蘇山 
  48.風光明媚な海沿いの町 山口県光市 
  49.山と泉と放牧の道 蒜山高原
  50.高炉が聳える鉄の町 北九州市八幡
  51.奇岩の島とみすゞのふるさと 青海島・仙崎 
  52.臨時列車で神話のふる里へ 高千穂町

 

灯台・海猫・国引き神話 日御碕

 出雲大社から日御碕へ行くには路線バスで45分ぐらいかかりました。現在はその半分程度で行けるようです。

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 ところで、日御碕までのガタガタ道を吊革につかまって揺れていると、ただでもバスは苦手なので、たちまち気分がわるくなってきました。「これは途中下車でもしないと、終点まではとても無理だろう…」。思案にくれていると、窓際に座っていた女子中学生が立ち上がり「もうすぐ降りますから」と、席を譲ってくれたのでした。

 それで、なんとか気分も回復。その中学生も程なくして降車していきました。おそらくこちらの顔色や変調に気づいたので、気を遣わせないように早めに立ってくれたのだろうと思います。

 最近は認知機能が極端に低下し、たいていのことは忘れてしまうのですが、旅先で受けた小さな親切だけは、いつまでも覚えているものです。

 おかげで途中下車せずに、何とか日御碕のバス停まで行くことが出来ました。

 

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 日御碕の断崖と日本海

 日御碕は島根半島の最西端に突出する台地で、そのあたりはリアス海岸になっています。元々は隆起した台地が日本海の荒波に浸食されたと推測されます。

 『出雲国風土記』に「八穂尓支豆支(やほにきずき)の御埼」と記されているのがそれで、神話の国引き八束水臣津野命(やつかみずおみづのみこと)が綱で引いて出雲にくっつけたのだそうです。八束水臣津野命は出雲の自然神かもしれません。大国主命が須勢理姫(すせりひめ)と結婚しているなら、八束水臣津野命(淤美豆奴神)が大国主命祖父ということはないように思われます。

 海岸の隆起もしくは退潮、あるいは「八束水」から想像すると河川による土砂の堆積などで島と陸がくっついたのかもしれません(八束水大水の命?)。綱を引っ掛けたという三瓶山の側には斐伊川(ひいかわ)があり、大山の側には日野川がありますから。嵐や洪水の神さまなら素戔嗚尊と共通する要素がありそうです。

 出雲は昔「根之堅州国」と呼ばれていました。「島根」は「島」と「根」からなっている地名です。根(陸)の方にい州が出来て、島とつながったのかもしれません。現在も半島のつなぎ目の底の平坦地に主要な町が並んでいるのです。

 

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 荒礒の漁船だまり


 
近くの断崖の下には、入江に抱かれるように小さな船だまりがありました。


 岬の先端には明治36年(1903)設置、そして点灯の日御碕灯台があります。
 その少し南に日御碕神社があり、祭神は素戔嗚尊天照大御神。社殿は徳川3代将軍家光による造営だそうです。 天照大御神は「日いずるところ」と「日沈むところ」で伊勢に対応させているのかもしれません。素戔嗚尊は経島から移ってきたとのことです。

 

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 経島(ふみしま)

 神社の西側の海岸は、ウミネコの繁殖地で知られる経島です。目前ですが、渡島は禁止になっています。そのかわり島に向かい合って展望所があり、硬貨を入れるとウミネコが観察できる望遠鏡も備わっていて、踏み台はなんとビールの空箱でした。

 

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 灯台への道

 バス停から灯台へ向かう道は現在は整備されているかもしれませんが、人家の間の狭い通りを抜けていく、いかにも生活感ある道でした。その先に灯台が見えます。基部に小さな四角い建物があって、それと一体になった円い灯台が聳えています。


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 光源装置

 
日御碕灯台「世界の歴史灯台百選」に選定されている高さ43.65mの白亜の灯台で、光は40㎞先まで届くそうです。内部の螺旋階段はかなり急でした。

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 灯台直下の隆起海食台

 灯台の上から見下ろしたところ。人が立っているようです。

 泡立つ波が押し寄せたり引いたりしています。


 日御碕は晴れた日だと見晴らしがよく、日本海が遠望できるので、長く滞在しても見飽きることがありません。

 ただし、風雨の強い日や、寒い日は、用件があるとか言って早めに失礼したほうが賢明でしょう。

 

 このあとどこへ行ったのかな?
 忘れてしまった。
 

 

 


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